衝突軽減ブレーキが利かない地域があるってホント?

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驚きの情報をゲットした。

その情報とは「ある地域で、衝突被害軽減ブレーキシステムが利かなくなる」という噂だ。

そこで「衝突被害軽減ブレーキシステムが利かない地域があるってホント?」かどうか調べてみた。

その原因は電波望遠鏡にあり!?

まず、本当に衝突被害軽減ブレーキが利かない地域があるのか確認してみよう。
 
その詳しい情報を知っているという自動車評論家のHM氏に実情を聞いてみた。

衝突軽減ブレーキが利かなくなる地域があるって本当ですか?

「どうやら電波望遠鏡施設の周辺で、衝突軽減ブレーキのシステムに使われるミリ波レーダーの周波数と電波望遠鏡に使われる周波数が干渉して、ある地域で衝突軽減ブレーキの作動しなくなるという話があるようです」とHM氏。

そうなんですか!その地域ってどこなんでしょうか?

「私が聞いた情報だと岐阜にある電波望遠鏡施設の周辺、半径およそ10㎞内です。そこではメルセデスなどの車でそういう現象が起こるらしい。

それが原因なのか、トヨタのプリクラッシュセーフティシステム搭載車が売れないという噂もある。まあ実地で試したことはないから確かな情報ではないけれど」

問題のポイントはシステムの周波数

そんな衝撃的な情報をキャッチしたからには、当時者に聞くしかないということでメルセデスベンツジャパン広報部に聞いてみた。

わたし「御社の衝突軽減ブレーキが場所によっては利かないらしいと聞いたのですが」

広報「はい。ご指摘のとおり利かない場合があります」

わたし「どのような状況で起きてしまうのですか?」

広報「日本の天文台にある電波望遠鏡は24GHzの周波数帯を使用しているのですが、弊社製品に搭載される衝突軽減ブレーキのミリ波レーダーでも同じ周波数帯を使っており干渉してしまうため、その付近ではシステムがオフになります。

ただ、13年にマイナーチェンジしたEクラスからはミリ波レーダーに25GHzの周波数帯を使っていますので、干渉は起きません。」

わたし「Eクラス以外は大丈夫なんでしょうか?」

広報「Eクラスのマイナーチェンジ以前のモデルではそのような現象が起きる場合もありますが、注意書きもカタログに記載しておりますし、今後は25GHz帯を使ったシステムに順次移行していく予定です」

実際にメルセデスベンツジャパンの公式ホームページを見てみると「同じ周波数帯のレーダーを使用している電波望遠鏡施設の周辺では、BASプラス、PRE-SAFEブレ-キ、アクティブブラインドスポットアシスト、ディストロニック・プラスは自動的に機能が解除されます」という注意書きが掲載してあった。

ということで、ある地域で衝突軽減ブレーキシステムがオフになるというのは本当だった。そしてポイントは24GHzという周波数帯のようだ。

では、トヨタのプリクラッシュセーフティシステムも同じようにシステムがオフになってしまうのか?

こちらもトヨタ広報部に聞いた。

わたし「御社のプリクラッシュセーフティシステムは電波望遠鏡付近では作動しないのですか?」

広報[いえ、弊社ではそういった事象は報告されていません]

わたし「そうですか。ちなみにプリクラッシュセーフティシステムの周波数帯はいくつなのですか?」

広報「すいません。それは公表しておりませんのでご容赦ください」

スッキリしない解答だったので、さらに調べてみると電波法が絡んでくることがわかった。                  

電波干渉が起こるのは輸入車のみ

日本の電波法では周波数の割り当てが事実上決まっている。

前述の24GHzの周波数帯は電波望遠鏡用が主な用途とされているため、当初は24GHz帯を使うメルセデスベンツの衝突軽減ブレーキシステムは日本への導入が実現しなかった。

電波望遠鏡付近でシステムオフする機能を付けることでようやく認可が下り、輸入できるようになったという訳だ。

このように法律も問題もある中、実際現状でどのメーカーの衝突軽減ブレーキシステムがこの24GHz帯を採用しているのか?

衝突軽減ブレーキに明るい交通コメンテーターのNN氏に解説してもらった。

「まず、トヨタをはじめ国産メーカーに関しては、76~77GHZ帯を衝突軽減ブレーキのミリ波レーダーに使っている。周波数が違うから電波望遠鏡と干渉することはない」

では輸入車はどうなっているんでしょうか?

「輸入乗用車も13年発売モデル以降は24GHz帯は使っていない。メルセデスペンツもEクラス以外のモデルでもシステムを製作するコンチネンタルがもうこの周波数を使うものを作っていないから、別の周波数帯を使用するシステムに移行している」

つまり国産車、輸入車ともに2013年以降のモデルでは電波望遠鏡と干渉する衝突軽減ブレーキシステムを採用しているものはないということ。

総務省が公表している13年10月現在の電波使用状況によると、衝突軽減ブレーキのレーダーで主に使用しているのは22~29GHzの超広帯域無線システムの周波数帯と自動車用レーダーとある主力の76~77、79GHzのゾーン。

24~25GHzは16年までしか使えないので、以降は衝突軽減ブレーキでは、76~77、79GHz帯を主に使うことになるだろう。

それならトヨタのプリクラッシュセーフティシステム搭載車が電波干渉が原因であまり売れないという噂の真偽は?
NN氏は言う。

「それは完全なデマ。衝突軽減プレーキが普及の過渡期の今、いろんな誤解も出ている。ABSも当初は誤解されていたが、あくまでこういった装置は人のうっかりミスを防いでくれる補助システムなんだと考えないといけない」。

まとめ

ということで「衝突被害軽減ブレーキシステムが利かない地域があるってホント?」という情報の真偽は、「電波望遠鏡が使う24GHzという周波数帯とミリ波レーダーの周波数帯が干渉しあっている地域ではシステムオフされる」という結論になった。

でもそれは、12年以前に発売されたミリ波レーダーを使う一部の輸入車での限定的な話で、電波望遠鏡の近くではすべての衝突軽減ブレーキが使えなくなる訳ではないということだ。