なぜスズキがインドでAMT車を発売するのか?

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国産車のトランスミッションと言ったら、CVTやトルクコンバータ式のATが大半。

そのいっぼうヨーロッパ車メーカーはMTを元に、クラッチとギアのセットを2系統持つデュアルクラッチトランスミッションに代表されるAMTが近年増加。

双方、メリット・デメリットあるのだがMT車譲りのダイレクト感やパワーの伝達利便性が優れることなどから車マニアの間ではMTベースのAMTに人気が集まっている。けれども国産での『採用例はGT-Rなど一部のスポーツグレードにかぎられる。

しかし2014年1月14日、スズキがオートギヤシフト」なるAMTを開発したと発表した。

しかもインドでこのトランスミッンヨンを搭載した車を販売するという。そこで今回はどうして、スズキがインドでAMTを発売するのか?という不思議に迫っていきます。 

オートギアシフトを鈴木直也氏が解説!

インド人が理不尽に燃費を気にするのはよく知られていると思うけど、それにまつわる運転法がちょっとこだわりがあるんだよね。

車の催しや試験でインドを訪問した時の体験なんだけど、大多数の運転手はやたらシフトアップが早く、とりあえずすぐ上のギアに上げて低回転で走ろうとする。

ノッキングしてみようが何だろうが、高いギアで走ること=低燃費という信仰が持っていて、それとは逆に低いギアで引っ張ることを好まないのだ。

だから、バスやトラックの運転手が田舎道で前の車を追い越したりの時も、必ずしもシフトダウンせずトップギアでジリジリ加速する。

乗ってるこちらとしては早くシフトダウンしてフル加速せえよ!とハラハラするのだが、それがアチラの文化なのだ。 

だから、この知らせを聞いた時にも「ああ、インドでATを売ろうと思ったらまずこのシステムしかないだろうな」と理解した。

スズキが’オートギアシフト’と名づけたこのATは、シフトとクラッチを電制油圧制御とした、ごくスタンダードな5速AMT。

2ペダルで自動シフトだが、ドライブフィールとしては、ドルゴンATやCVTよりMTに近い。おそらく、この「MTっぽい」というところが逆にインドではポイントで「ATだけど燃費が悪くない」という印象に結び付くんだと思う。 

インドの運転手をこれに乗せると、彼らは自動シフトのシフトアップタイミングが気に入らず、「マニュアルでシフトアップするにはどうやったらいいんだ?」と質問するはず。

そのような場合、トルコンATやCVTでは不得意な[無理やり上のギアにシフトする]制御も、AMTならわりと楽に適応できる。 

発進したらすぐマニュアルで上のギアに放り込んで、MTと同じ様なものでエンジンをカリカリさせながら走る。

これがオートギアシフトのインドでの一般的な使い方になると思います。 

鈴木氏の指摘するようにインドでは燃費至上主義の国民性もあり、MT比率約9割とATがなかなか普及してこなかった。なかでもトルゴン式ATは「伝達効率が悪く、燃費が悪そう」という従来のイメージが普及の妨げともなっていたワケ。

そこでAMTのオートギヤシフトが開発されたようだ。 

じゃあなぜ今、この時期にインドでAMT車を発売するのか?この点をインドの自動車産業に詳しいネクストマーケット・リサーチ社の須貝信一氏の まず、この疑問を探っていく。

なぜ今、AMTなのか?

まず、この疑問を探るうえでポイントになってくるのがインド国内の自動車販売状況。

インド国内の乗用車販売台数は年を経るごとに伸びている。

その中でも特に売れているのがスズキアルトが属する全長3・4~4mのコンパクトクラスの部門。

’05年と10年のデータを比べると、販売台数全体は高まっているもののコンパクト部門がインドで最も流行っているカテゴリという実態には違いがない。

これについて須貝氏は次のように分析した。

「コンパクトタイプがメインという大きな状況は変わりませんが、ここ数年でこのクラスのバトルは以前にも増して激しくなってきています。一つの例として2013年4月に発売したホンダアメイズやスズキディザイアなど全長4m未満のセダンが登場し、関心を集めています。」 

以前に比べ、インド国内のコンパクトクラスは幾つものラインアップとなってきているようだ。 

「(コンパクトクラスは)車種が増大して、ユーザーにとって選択肢も増えてきている。そうした理由もあり、今日まで売れていた。小さいハツチバックにに飽きてきているのでは」 

須貝氏がこう指摘するように、インド人たちはただコンパクトで燃費がいいだけでは満足せずほかの付加価値を求めはじめたといえるのではないだろうか。

アメイズやディザイアのコンパクトセダン人気もこうした流れを証明している。 

さらにインド国内のメーカー別販売シェアを見ると、マルチスズキ、タタ、マヒンドラの順は変わらないが、タタは前年同月の販売台数と比べ43・3%減、シェアも23・1%から15 %と大幅に落とした。

その代わりに13年4月にアメイズを発売し、シェアを上げたのがホンダ。

前年同月比29・5%増でシェアも1・6%から2・4%まで上昇させている。 

こうした国内シェアの動きをみてもインドの自動車産業の勢力図や使用者の求めるものが変化してきていることが納得できる。

こうした情況を踏まえ、スズキがオートギヤシフトをこのタイミングで発表したことについて須貝氏は「(オートギヤシフトの導入で)入門車における他社との差別化や中間層の主婦など新規注文層の開拓も図ろうという意図かあるのでは」 とリサーチ。

現在、AMTのオートーヤシフトを導入する背景には』こうすることになった事情があったのだ。 

搭載されるのはAスター継続者

さて、ではこのオートギヤシフトはどんな車に装備されるのか?スズキ広報部に問いあわせると「現時点では1月14 日にお出ししたリリースの内容とは別に公表できることはないんですよ……」とのことだった。 

この公表には「2月5日よりインドで開催されるデリーオートエキスポでオートギヤシフトを搭載する新型車を公表する」とあるが詳細は見えにくい。 

今回は実車をお見せすることは行なえないが、マルチスズキのWEB上を見るとティザー写真と一緒に、この新型モデルの車名がセレリオだということが発覚。 

セレリオは実質的にAスターの継承車にあたる車。ちなみにAスターは全長3・5m、全幅1・6mで1リットル直3エンジンを搭載。日本でいう軽自動車よりひとまわりビッグな車。

価賂は中間グレードで44万37 24ルピー(約71万円)とリーズナブルなモデルで、セレリオも同程度の価格・サイズになるハズだ。 

このオートギヤシフトは刷新されたエンジンと一緒にEzテクノロジーと名付けられ、燃費はクラストップの23・1㎞/リットル(メーカー公表値)に成功しているという。

これはAスターの 19/リットルからも大幅アップした数値。、燃費にうるさいインド人の需要にも応対している。 

まとめ

オートギヤシフトは昨今、競争か激しくなるインドのコンパクトカー市場においてスズキが自社製品に怦加価値を持たせ、他社製品と格の違いを見せつけるために開発しただろうか。 

しかしながら、インド国内のユーザーは低燃費指向か強くMT=燃費がいいという思考の声もよく耳にする。

なので、ドルゴンAT・じゃなくMTベースのAMTを選択したんだろう。

Aスター後継のセレリオに搭載実行されるということはコスト的には比較的安価なはず。日本への取り入れにも期待したい。